ネス湖の水は、茶色く濁っている。湖底の泥炭が溶け出しているせいで、潜っても数メートル先が見えない。そのうえ、いちばん深いところは200メートルを超える。
つまりこの湖では、水面のすぐ下で何かが動いていても、誰にも分からない。
…見えない、のではなく、見せてくれない。
約37km湖の長さ。細長く、深い
約230mいちばん深いところ
数m濁った水の中で見通せる距離
すべては1933年に始まった
湖の北側に道路が開通した1933年、湖を眺める人が一気に増えた。そして同じ年、「水面に大きな生き物を見た」という話が相次ぐ。見る人が増えたから見つかったのか。それとも、何かが人の目に触れる場所まで上がってきたのか。
- 1933年
北岸の道路が開通。目撃談が相次ぎ、新聞が「怪物」として報じる - 1934年
首を伸ばした姿の写真が出回る。のちに「外科医の写真」と呼ばれ、ネッシーの姿として世界中に広まる - 1990年代
撮影に関わった人物の告白で、写真はおもちゃの潜水艦に首の模型を付けた作り物だったと報じられる - 2018年
ニュージーランドの大学の研究チームが、湖の水に残る生き物のDNAを採取。翌年に結果を発表 - 2023年
8月、ここ50年で最大規模とされる一斉捜索が行われる。決定的な証拠は見つからなかった
作り物
約60年、ネッシーの「証拠」とされた写真は作り物だった。それでも目撃談は止まらなかった。写真が嘘でも、人が見たものまで嘘とは限らない。この湖の話がやっかいなのは、そこだ。
写真がニセモノだと分かってからも、見た人はいる。
湖の水が語ったこと
2018年、研究チームは湖のあちこちから水をくみ、そこに溶けている生き物のDNAを調べた。首長竜のような爬虫類がいれば、その痕跡が残るはずだった。
見つからなかった。代わりに、湖じゅうから大量のウナギのDNAが出てきた。研究チームは「巨大なウナギがいる可能性は否定できない」と述べている。
…湖の底に、何十年も生きた大ウナギが、いる?
正体の説を、ひとつずつ確かめる
否定的首長竜の生き残り首長竜は約6600万年前に絶滅している。ネス湖は氷河期のあと、約1万年前にできた比較的新しい湖で、海から閉じ込められたとも考えにくい
有力大きなウナギ水のDNA調査でウナギが大量に見つかった。ただし、目撃談にあるような大きさのウナギがいるかは分かっていない
有力見間違い船の引き波、流木、泳ぐ鳥やシカ。濁った水と細長い湖の形は、こうした見間違いを起こしやすい
確かめられずそれ以外の何か上の説では説明しにくい目撃談も残っている。目撃を記録する登録簿には、今も毎年のように報告が寄せられている
水深230メートル。
光の届かない場所で、何が泳いでいても、
私たちには見えない。